
vol.1 出逢い
1997年・5月の終わりに最愛の祖母が天へ召されました。
その翌朝それまで8年住んでいても一度も訪れる事の無かった猫がふらりと我が家へやって来ました。
一目見て授乳中の母猫と判るそのコはお乳ばかりが目立つやつれた姿でした。
やつれてはいましたが愛猫家だった祖母が最後に愛した猫マリーに毛の色柄がそっくりでドキリとしたのを
今でも鮮明に憶えています。まるで祖母に「私は逝くけどこのコを使いに出したから淋しがらないで」と
言ってもらってるようで。。。放っておけず「たいした物はないけどご飯食べに来る?」と当時はアパートの2階に住んでいたので
ついて来るかな?と後ろを振り向き振り向き確かめながら部屋へ招きました。
階段3段くらい下を私が振り向く度に『お・お邪魔していいんですか?』と確認するかのように立ち止まってアイコンタクト。
その度においでおいでと手招きしながら声をかけました。
猫と「だるまさんが転んだ」をしながら階段を上がりきってドアを開けたままにして「どうぞ*」と。
家に猫が居るわけではないから猫缶なんてなくて取り合えずご飯におかかをかけた猫まんまを作りました。
野良猫っぽいしスゴくがっついて食べるかと思ったのに「い・頂いていいんですか?」とまたも律儀なアイコンタクト。
食べ方もとてもキレイ。器からちょっとでもこぼしてしまうと「あ、こぼしちゃった」とちゃんとこぼしたのを先に
食べて。。。食べてる姿を傍らで見ていてまたドキリ。ポロポロと涙を流し始めたから。
泣き虫の子供がポロリポロリ涙こぼしてベソをかいてるみたいな健気な姿。
「貴方はウチに来たらベソちゃんて呼ぶね*またいつでもおいで*」
これが我が家の愛猫4匹の母猫ベソとの出逢いでした。
それから毎日のようにベソは我が家へ来るようになって1週間くらい経ったある日、いつものようにやって来たのに
呼んでも部屋には入ろうとしなくて、でも玄関でにゃーにゃー言うので「ついて来いってコトなの?」と
半信半疑でベソの後をついて外へ。案内されるままついて行くと家と家の間の狭い壁の隙間から
仔猫が「お母ちゃ〜ん」と3匹飛び出て来ました。でも私に気付いてシュタッと元の隙間へ逆戻り(苦笑)
そんな仔猫たちの前でベソは私にしきりにスリスリと甘えて見せて「この人は大丈夫なのよ」と。
それ以来ベソはゾロゾロと子連れで我が家にやって来るようになりました。
仔猫たちは黒猫ちゃんはクロ・トラ猫ちゃんはトラ・白黒猫ちゃんはちょうど眉間のトコから毛色が
分かれていたのでチャクラと名付けました。みんな見たまんまのベタなネーミングです(笑)
ご飯を食べてひと遊び、遊び疲れてひと眠り。目覚めると「お邪魔しました」といつもの律儀なアイコンタクトを残して
どこかへ帰って行く。。。そんな日々が1ヶ月以上続いた頃、ベソ一家がいつものように我が家に来ていた時の事。
いつものタイミングでそろそろバイバイの時間かな。。。という頃にいきなりの雨。しかもどしゃぶり。
いつも穏やかなベソなのに困った様子で落ち着きません。帰れなくて困ると言うよりずっとお邪魔しては
迷惑かけるし。。。と私の顔色を伺ってる様子。賢くて律儀で健気なベソ。
バシャバシャと騒ぐ雨音をBGMに私はベソ一家の為のベットを作りました。
仔猫たちも入りやすいようにダンボールを浅くカットして壁に掛けていたキルトを外して敷きました。
「ベソ、みんなのベットが出来たよ*すごい雨だからココに泊まっていかない?良かったらずっとウチに居てもイイんだよ*」
『い・いいんですか?ココにいさせてくれるの?』まるで私の言葉を100%理解しているかのように、不安げだったベソの表情は
喜びに華やぎました。あの嬉しそうな顔、私は生涯忘れられないと思います。
この日から私達夫婦+ベソ一家の暮らしが始まりました。