vol.2 お産婆さん

仔猫たちはスクスク大きくなって遊び盛り。この頃になると3匹の個性がハッキリしてきました。
先ずチャクラがリーダー的存在。離乳期に入って食べられるようになったご飯にも「ボクがいっちばーん!」ってカンジ*
トラは何とも猫らしい気紛れな女の子*クロはいっつもオドオドしてて何するのも一番最後。。。「クロ、もぉちっと頑張れ」って
いつも応援しちゃういじらしさ*遊び盛りの仔猫たちがいつでも遊べるようにと椅子の下に空になった糸巻きに小さな鈴をつけたのを
ぶら下げてみた時もチャクラとトラは飛びついて2匹で上手に猫パンチし合って遊ぶ。ホントは自分も遊びたいだろうにクロは
2匹がパスし合う糸巻きをキョトキョト目で追ってちょこんと座ってる。やがてチャクラとトラが遊び疲れてお昼寝の頃に
クロは1匹で糸巻きに戯れる。なんだか鈴の音が淋しくて、私が相手になって糸巻きをパスすると
嬉しそうにメチャメチャはしゃぐ。静と動の激しいコ・笑

アブラゼミがうっとおしいくらい鳴く季節になって異変に気付きました。
どうやらベソは次の赤ちゃんを妊娠したみたい。。。次第に大きくなるお腹。
たくさんの猫の飼育本を読んで産箱を用意してベソに「赤ちゃん産むトコロだよ*」と教えてみる。
分娩中のトラブルに備えて産箱の天面はすのこの上に布を掛けて遠目にチラと中の様子を確認出来る造りにしておいた。
こんな造りにした理由。。。よほど人と猫の間柄に信頼関係がないとお産した母猫は仔猫を人に見られると食べてしまうと聞いていたから。
出逢いから2ヶ月のこの時点でベソがどこまで信頼してくれているかも自信がなかったから。。。どうしてもの緊急事態が
起きない限りは遠目にすのこのほんの少しの隙間から見守ろうと思って。


1997.7.31。すごく蒸し暑い日の赤い夕陽の中、お散歩から戻ったベソの息づかいが荒い。
荒い息で私の足元に2,3度スリスリするとスーっと産箱へ入っていく。
「いよいよ産まれるのかな?どうしてあげたら良いのかな???」とオロオロして分娩室前の父親みたいな私・笑
あんまり近くに居たらいけないかなと意識して距離をおいてキッチンから部屋の隅に置いた産箱を見守った。
5分もしないでベソがにゃーにゃー鳴き出した。いつも私を呼ぶ時の鳴き声と同じで特に苦しそうとかではない。
狭いアパートの部屋の隅とキッチンの隅で精一杯取れる距離を置いたままベソの呼び声に
「大丈夫だよ*ここに居るよー*」と声を返した。何回もこれの繰り返し。
ベソの私を呼ぶ声はだんだんに大きく、不機嫌になってくカンジがした。それでも産箱には近寄れないでいると
産箱の天面のすのこをガタゴト頭で押し上げてベソがにょきっと顔を出した。顔が怒ってる。。。
ひときわ大きく不機嫌な声で私をじっと見据えて「にゃぁぁぁー!」と言う。『来てって言ってるのになんで来てくれないのっ!早く傍に来て!!』

ベソに怒られた。。。そんなに信頼してくれていたのかと涙が溢れた。
その後は産箱にぴたり寄り添ってベソの陣痛に合わせてお腹をさすった。ベソのいきみ方がだんだん強くなる。
その度、私まで子宮にチカラが入ってしまう・笑 赤ちゃんの頭が見え始めたら後はつるんっと。
誕生の瞬間「わーっ!大きい赤ちゃんっ*」と思わず声に出た。ベソは手際良く臍の緒を処理して赤ちゃんを舐めてキレイにしてあげてる。
安堵感と誕生の感動と夏の暑さが入り混じってなんだかボーっとする。赤い夕陽が目に焼きついた。

少し間があって第2子が産まれた。初めの子と同じようにベソは赤ちゃんをペロペロとキレイにしてあげている。
でも急にプイとそっぽを向いてしまう。それきり赤ちゃんを舐めようとしない。死産だった。
私は必死に蘇生を試みた。そうこうする間に第3子が産まれた。しっかりと産声も聞こえる。ベソもちゃんと舐めている。
蘇生をしながら横目で大丈夫な事を確認して第2子を胸に抱いて温め蘇生を続けた。

奇跡は起きなかった。第2子はクロと同じ黒猫だった。
「今度は強い強い命を神様にもらうんだよ*百獣の王のようにね*」そう願ってシンバと名付けお別れした。
出逢いと別れ・生と死。。。生まれて初めて猫のお産婆さんをした夏の記憶。



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